
意解
古陵を囲む松柏は空吹く風にほゆるなり。花を求めて来てみれば山寺寂しく人けなし。
落花をはらう老僧は、しばし帚の手をやすめ。吉野の悲史を語るなり。
吉野の如意輪寺に桜見に来たが、寺内の古い陵のほとりには、松と柏の樹が高々とそびえ
空吹くつむじ風に、唸り声をたてている。
この山寺のあたりは、春というのに人影もなく、桜の花も大部分散り落ちて、非常に物寂しい
感じである。
折から眉毛が雪のように白くなった老僧が、辺りを掃いていたが、自分の姿をみとめると帚く手を
やめて、桜花が散り敷いている所に、私をいざない、叮寧に、、昔の(南朝時代)物語を、いろいろと
話してくれた。
字解
古陵 古い御陵(みささぎ)のことでここでは後醍醐帝の御陵をさす。
天飆 つむじ風のこと、荒々しい風
山寺 如意輪寺をさす
尋春 春景色をさぐる
寂寥 寂も寥もさびしい、周囲がシーンとしてものさびしい意
眉雪 眉が雪のように白いという表現
第12回 武集会のつどい
日時 平成20年2月16日(土)
場所 道頓堀ホテル
にて収録