花のみ吉野
漢詩 藤井 竹外
雲か霞かみ吉野の春に昔の跡訪えば
永久に恨みを吹く風が散らす桜の花吹雪

 古陵の松柏天飆に吼ゆ
 山寺春を尋ぬれば春寂寥
 眉雪の老僧時に帚くことを輟め
 落花深き処南朝を説く

夢かうつつか九重のありし宮居の詩ごよみ
めぐる年月語りてはあわれ散る散る花吹雪
アーアーアーアーアー
吟詠 木村 岳尚

意解

古陵を囲む松柏は空吹く風にほゆるなり。花を求めて来てみれば山寺寂しく人けなし。
落花をはらう老僧は、しばし帚の手をやすめ。吉野の悲史を語るなり。

吉野の如意輪寺に桜見に来たが、寺内の古い陵のほとりには、松と柏の樹が高々とそびえ
空吹くつむじ風に、唸り声をたてている。
この山寺のあたりは、春というのに人影もなく、桜の花も大部分散り落ちて、非常に物寂しい
感じである。
折から眉毛が雪のように白くなった老僧が、辺りを掃いていたが、自分の姿をみとめると帚く手を
やめて、桜花が散り敷いている所に、私をいざない、叮寧に、、昔の(南朝時代)物語を、いろいろと
話してくれた。

字解
古陵 古い御陵(みささぎ)のことでここでは後醍醐帝の御陵をさす。
天飆 つむじ風のこと、荒々しい風
山寺 如意輪寺をさす
尋春 春景色をさぐる
寂寥 寂も寥もさびしい、周囲がシーンとしてものさびしい意
眉雪 眉が雪のように白いという表現

第12回 武集会のつどい
日時 平成20年2月16日(土)
場所 道頓堀ホテル
        にて収録